Vol.7 GW日本公開のメキシコ映画『ダック・シーズン』フェルナンド・エインビッケ 監督特別インタビュー

●尊敬する監督は小津安二郎とジム・ジャームッシュ!
自ら脚本を手がけた長編映画デビュー作『ダック・シーズン』(原題:『テンポラダ・デ・パトス』)が、メキシコだけでなく、ロサンゼルス映画祭、カンヌ映画祭をはじめとする国際舞台でも高く評価されたフェルナンド・エインビッケ監督。大都市メキシコシティの一角に群れをなす団地の一室で繰り広げられる、4人の“ちょっとした”物語は、フェルナンド監督の優しい眼差しと、ウィットの効いた遊び心に満ちている。
「スタッフの大半にとって、初めての映画。商業的な成功を意識せず、ストーリーを大切にして、自分たちが本当に作りたいもの、誇りに思えるものを作りたかった」。メキシコ映画界が生んだ35才の新星にとって、本作の興行的な成功は想定外の喜びだったようだ。

 1992年から1996年にかけて、メキシコ国立自治大学(UNAM)で映画作りを学び、数々の短編を発表。プラスティリナ・モッシュ、ジャンボ、ヘニタリカらロック、ヒップホップ系グループのミュージック・ビデオ監督としても手腕を発揮してきた。音楽をこよなく愛し、本作では主題歌として、売れっ子ナタリア・ラフォルカデに、ブラジル・ボサノヴァ界の巨匠ジョアン・ジルベルトの「O Pato」(「ガチョウ(アヒル)のサンバ」)のカヴァーを依頼したり、予想外の場面でベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を流したり…と音楽センスの良さと守備範囲の広さを披露している。
 撮影は5週間。自然光を利用し、白黒でも単調に見えないよう構図にこだわった。やんちゃな少年コンビ、フラマとモコ役のキャスティングにあたっては、「子どもらしい生き生きとした表情と振るまい」を重視。オーディション会場で数時間好きなように過ごしてもらい、その様子を観察して決めた。実際に起用したダニエル・ミランダ(フラマ)とディエゴ・カターニョ(モコ)の二人は、遊んでばかりで大人たちを困らせたそうだが、各シーンの目的等を丁寧に説明し、彼らなりに理解してもらうように心がけたことで、効果的な即興シーンがいくつか生まれるに至った。
「(撮影は)困難の連続だったけど、同時に楽しみの連続だった。一番難しかったのはボク自身、自分の恐れや不安と向き合うこと。でも、すばらしいチーム、プロデューサーやカメラマン、ボクの信頼する人たちが助けてくれた。これからも、お膳立てされた環境下ではなく、インディーズの精神で、困難でも楽しい映画づくりに取り組んでいけたら幸せだね」。

●『ダック・シーズン』で演技の楽しさに開眼!MOKO役のディエゴ・カターニョ君

ディエゴ君の一番好きな映画は、思い出の詰まった『ダック・シーズン』。『グラディエイター』や黒澤明監督の『7人の侍』もお気に入りです。音楽は70年代ロックがお好み。仲間内のパーティでDJを買って出ることもあるそうで、メキシコ人ミュージシャンでは、プラスティリナ・モッシュ、カフェ・タクバのほか、ロス・パンチョスという渋好みの一面も。

日本公開目前の『ダック・シーズン』で、“モコ”役を自然体で演じているディエゴ・カターニョ君。知人の紹介でエキストラ出演した映画『Zurdo』(2003年/カルロ・サルセス監督)のキャスティング担当者が本作のキャスティングにも加わっていたことから声がかかり、友人と一緒に遊び気分でオーディションに参加したところ、見事大役を射止める結果となりました。フェルナンド監督をはじめ、オーディションに居合わせた制作スタッフ全員を唸らせたというピュアな存在感はスクリーン上でも輝きを放っています。
 3月28日(火)12時。待ち合せ場所に指定してくれたコンデサ地区のお洒落カフェに、時間ぴったりに現れたディエゴ君は、あどけなさの残るやんちゃな13歳から多感な16歳へと成長。フェルナンド監督の自由かつ柔軟な指導のもとで演技の面白さを十二分に体感したことから、プロのサッカー選手を目指し、メキシコ国立自治大学(UNAM)のPUMASのジュニアチームで練習に励む日々に別れを告げ、高校に通いながら俳優としての将来を模索中です。公開は未定ですが、すでに第2作目となる映画の撮影を終了。出席日数が足りず、高校は留年決定となったものの、今後もいい脚本に出会えたら積極的に出演したいとのこと。 『ダック・シーズン』での相棒“フラマ”役のダニエル・ミランダ君とは私生活でも意気投合。最近はなかなか会えないものの、互いに連絡を取り合う仲。二人ともリタ役のダニー・ペレア嬢に恋心を抱いていたと照れながら語ってくれました。インタビュー中、俳優仲間のヒメナ・アヤラ嬢(2001年公開の社会派映画『ペルフメ・デ・ビオレタス、ナディエ・テ・オジェ』に主演。同作はメキシコのアカデミー賞と称されるアリエル映画賞の5部門を制覇)が登場。気の会う仲間で短編フィルムを撮る計画が進んでいるそうで、メキシコ映画界の将来を担う若き才能たちの今後の活躍が楽しみです。